2012-02

その高い場所からは何が見えるのか?

何日か前のヤフーニュースで見た、
デパートの屋上の遊戯施設が消えていく…みたいな記事。

僕が子供の頃、僕の育った地方都市にのデパートには、
まだけっこういろいろな遊具があった。
今思えばちょっとした遊園地みたいなもので、
デパートに行くと、買物よりも屋上のほうが楽しみでした。

でも、一番よく行ってたデパートで飛び降り自殺が何件か続き、
遊戯施設は封鎖になり、屋上に出ることすら禁止された。
それ以来、デパートの屋上で遊ぶという記憶は途絶えました。

岸田國士の戯曲に『屋上庭園』というのがあります。
デパートで偶然出会った友人が屋上で会話するという話ですが、
「そら何時か此処から飛び降りて自殺した奴がいたね」
というセリフが冒頭にある。

これは本当の話だそうで、
1926年5月16日に銀座松屋の屋上から人が飛び降りて、
これが日本における飛び降り自殺第1号だったらしい。
岸田國士の戯曲は、この事件の直後という設定のようです。

ふたりの友人のうち、ひとりは成功者で金持ち、
もうひとりは今も生活苦にあえぐ貧乏暮らし、
親友なのに対照的な人生を歩むふたりが、
自殺者第1号の出たデパートの屋上で会話するというのが、
この戯曲の面白さのひとつになっています。

高い所から飛び降りる、という自殺のやり方は、
そもそも高い所がなければ誰も思いつかないだろうから、
高層ビルを建てるだけの技術的進歩の上に成立した自殺手段であり、
そういう意味では、近代的な自殺のやり方ですね。

ただし「飛び降りる」ことで自殺する人は昔から大勢いたらしく、
たとえば江戸時代には隅田川に次々と橋がかけられましたが、
その多くは飛び降り自殺の名所になったそうです。
落語『文七元結』なんかにも出てきますよね。

人間の技術の進歩は「高さ」を克服するための進歩、
都市は上へ上へと伸びていくけど、
同時に、その高さを利用して自殺する人も増えるわけで、
それはなんとも皮肉です。

……なんてことを思っていたら、
昨日だったか、やはり面白い記事を発見。
高層ビルのオフィスでは社内恋愛が生まれやすいとか。

高い場所にあるオフィスは閉鎖的で不安も多い、
いわゆる「吊り橋効果」もあって男女が惹かれやすい、
ということらしい。ほお、なるほどね。

しかも、高層ビルから下界を眺めていると
なんだか自分が支配者というか、偉くなったような気がして、
特に男性の場合は、ナントカフェロモンが分泌されて
下界にいるときよりも女性を惹きつけやすいそうです。

うーん、そこまで言われると、ホントかよ?と思うが、
確かに高層ビルの上のほうでは、
下界にはない新しい精神構造が生まれるような気もします。

僕は高い所は苦手なのですが、そんな僕でも、
都庁の展望台なんかに上ると、
なぜか達観したような超越したような、そんな気になる。

何もかもがどうでもよくなって、つい飛び降りてしまう、
なんていう気分になるのも、なんとなくわかる気がします。

松任谷由実の名曲『ツバメのように』は、
高いビルの上から飛び降り自殺する女性の心象風景を歌った曲ですが、
「高いビルの上からは街中がみんなみんなバカらしかったの」
という一節があります。

ただ、それよりも僕がこの曲の歌詞で好きなのは、
ビルの上から飛び降りて地上に到着するまでの数秒間を、
「彼女の最後の旅」という言葉で表現しているところ。

高い場所は、それが死であっても恋愛であっても、
新たな旅立ちのための場所なんですね、きっと。








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