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2019-03

もしホームレスになるなら上野より新宿

昨夜はロス・マクドナルド『運命』を読み終えてから、
眠れなくて夜中まで柳美里『JR上野駅公園口』を読んでました。

美術館とか動物園とか公園とか以前はたまに行くこともあったけど、
最近は全然行ってない上野。一時期、頻繁に行ってた時期がある、
でも、なぜだったか、その理由が思い出せません。

『JR上野駅公園口』は、まさに上野駅を出た、あのあたりで、
ずっとホームレスやってる老人が、自分の人生を振り返る小説。
昭和天皇と同じ日が誕生日なので、
このホームレスにとって自分の人生を振り返ることは、
昭和という時代から平成にかけての日本を思い返すことと重なる。

福島県相馬市に生まれた彼は東京オリンピックの前年に上京、
ちょうど日本が驚異的な経済成長をしていた時期に、
彼は社会の底辺でうごめき続けます。

皮肉なことに息子の誕生日も、皇太子の誕生日と同じ。
でも皇太子はすくすくと育って平成の時代が始まりますが、
彼の子供は21歳の若さで亡くなります。

昭和から平成にかけての日本人の光と闇、幸福と不幸、
生と死、そういう正反対のものがいろいろな形で描かれます。
男の出身地が福島県相馬市ということからもわかるように、
東日本大震災のことも出てきます。
ただ、その震災がとりたててクローズアップされるのではなく、
さまざまな不幸の歴史でもあった時代の、ひとつの経験として。

いつも頭のどこかで、自分の人生と天皇の人生を重ねていた彼が、
たった1度だけ、ナマの天皇を見る場面があります。
何かの授賞式の帰りに上野公園近くを車で通る天皇。
それを見ているホームレスの男。

じつはぼくも、ほとんど同じような状況で1度だけ、
ナマの天皇を見たことがあります。
目黒に住んでいた頃だから、多分、6年ほど前、
緑が丘駅前で天皇一行の車列をたまたま見たのです。
駅前に人が大勢集まって手を振っていました。

車の後部座席で、人形のようにつやつやした平成天皇と皇后が、
穏やかな顔で小さく手を振っていました。小説の中に、
「てのひらをこちらに向け、揺らすように振っているのは天皇陛下だった」
という一文があります。ああ、同じ光景だったなあと思いました。

自分が3つの時代をまたいで生きることになるとは想像してなかった。
最近そんなことを思います。元号が変わることにどんな意味があるのか、
それは人それぞれだと思いますが、
少なくともひとつ確かなのは、この国には、
何が起ころうとも、国民がどんな生き方をしようとも、定点観測の一点のように、
何も変わることのない不動の人生を生きている人々がいること。

でも、それがいいとか悪いとかの話ではなくて、
その人たちが背負わされているものも、
ふつうの日本人ひとりひとりが背負っているものも、
きっと同じなのだろうなと思います。
なにげなく買った本ですが、この時期に読むのにいい小説でした。

ちなみに、ぼくがホームレスになるとしたら
上野ではなく新宿を選びます。一番東京っぽい風景だから。新宿西口。
ほどこしは素直に受けるタイプだと思うので、よろしくです。





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TheaterNautilus

Author:TheaterNautilus
シアターノーチラス代表・今村幸市によるブログです。
年に2~3回、オリジナルの脚本による芝居を上演しています。
次回公演は2018年10月です。
http://theaternautilus.
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