2017-10

理由など、いらないのだけど

村上春樹の古ーいあの小説が読みたいけど、
そううまいこと古本屋にあったりしないだろうなあと
まったく期待しないで出かけていったら、
まさにその村上春樹の古ーい小説があった。
しかもその古本屋で村上春樹の小説は、それだけ。
ピンポイントで探していた小説が、さほど大きくない古本屋で見つかる、
それはもう、運命みたいなものではありませぬか。

Twitterか何かで、自分の子供に「どうして本を読むの?
本を読むとどんないいことがあるの?」と質問された母親の返答が、
話題になってるそうですね。詳しくは知らないのですが……
母親は何と答えたのだろう、気になります。

女優の蒼井優は舞台で共演した渡辺えりに、
「役者たるもの、たくさん本を読まなきゃだめですよ」と言ったそうです。
ほとんど本を読まない渡辺えりは苦笑いしていました。

ぼくはべつに人に「本を読んだほうがいいよ」なんて言いませんが、
ただ、役者さんには、たまに「役者やるなら、読書したほうがいい」と
偉そうに言ったりします。まあ、余計なお世話と思いつつ。

ただ、だからといって「どうして読書したほうがいいのか?」と質問されたら、
正直ちょっと困る。あまり良い返事が浮かばない。
「そうか、だったら、頑張って読書しますね!」と言ってもらえるような、
そんな「読書の理由」があればいいのだけど……思いつきません。

思いつかないけど、それでもやはり、「役者」というものをやる以上は、
役者には「本を読む」ことが不可欠だと信じています。

いろいろな人間が、いろいろな環境の中で、いろいろな生き方・考え方をする。
それを知るためだけにでも、読書ほど有効なものはない。
「他者を演じる」のが仕事の役者ですが、
しかしひとりの人間の想像力では計り知れないものが、人間にはある。

たとえば「この人は、このとき、なぜこんな言葉を言うのか?」という疑問は、
その疑問が浮かんだ時点ですでにその役者の想像力を超えているわけです。
そんなとき、いかなる演技テクニックも役に立たない。
かろうじて役に立つもののひとつが、積み重ねてきた読書体験です。

いや、べつに具体的に「あの小説の、あの登場人物が…」なんていうのではない。
読書を通して「人間は、自分の想像力を超えた存在である」
ということを知ってるだけでも、全然違う。役との向き合い方が。

役を受け止めるときの、役者の心身の自由さと柔軟性を育てるために、
本を読むことは、とても大切なことだと思います。

……なんてことを、いくら言ったところで、本を読まない人は絶対に読みません。
読書というのは習慣性のものだから、まあ、今さら言っても……てことですかね。
それでもやはり、芝居やる人は、読書したほうがいい、心底そう思います。

ただ、最近はこうも思います。
「人間を知るために読書をする」のではない、
「人間というものに本当に興味があれば、ほっといても勝手に読書するものだ」。
人間が好きなら、人間を知りたいと思うなら、自然に本を読むのだろうと。

そして、役者というものも、「人間が好き」「人間に興味がある」が根本である。
だから、もう自然の摂理として、「役者は読書するものだ」ということになる。

いろいろな劇団に出演して舞台経験を増やすのもいいし、
演技の学校に行くのもいい、べつにそれらも大切だけど、
でも読書するという体験をないがしろにしたら、
何を積み上げても何も積み上がらないような気がします。

といっても、それはべつに、「読書も大切な勉強だから」という理由ではない。
その人には根本的な「人間への興味」が薄いような気がするからです。
素朴な意味での、純粋な意味での、人間への興味、好奇心、
それが「演じる」ことの出発点だと思います。

こんなことをつらつら書くのは、
最近、脚本を書きながら「なぜ書いてるのだろう?」とよく思うからです。

そして、めぐりめぐってたどり着くのは、
「結局、なんのかんの言っても、人間が好き、人間に興味あるから」
というところに落ち着きます。
要するにそこなんだなあ、と思うと、また新しい気持ちで脚本に向かえます。

そして今回も、そんな気持ちで書いています。
「孤独の観察」、楽しみにしていてください。





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