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2024-03

じつは、ゴジラ

翻訳家岸本佐知子さんのエッセイ集を読んでたら、
(というか、これエッセイなんですかね、奇妙な文章ばっかりで)
着ぐるみが怖い、みたいなことが書かれてた。
着ぐるみというか、着ぐるみの中に入ってる人、というか、
ともかく、かわいらしい外見と、中に入ってる人のギャップが怖い、
そんなようなことです。

それ読んでて思い出したことがあります。
ぼくは1度だけ、ゴジラの着ぐるみを着たことがあります。
東宝から借りてきた本物です。
まあ、本物といっても映画撮影に使ったものではなく、
宣伝のために何体か作られたうちのひとつだと思いますが、
ともかく東宝からじきじきに借りてきたのは間違いない。

フリーライターになりたての頃、
インタビューの仕事であるお医者さんに会ったのですが、
そのお医者はゴジラが大好きで、
ゴジラを生物学的にマニアックに解説した本を出版した、
それについて某雑誌に掲載する記事を書くためのインタビュー。

で、当然、写真を撮影するわけですが、
ただお医者の顔写真だけじゃつまらないと考えた編集者が、
わざわざ東宝から着ぐるみを借りてきて、
お医者とゴジラのツーショットを撮影することになったのです。

インタビューが終わって、さて誰がゴジラを着るか?ということになった時、
編集者とカメラマンの視線は、じっとぼくに注がれていました。
そんなわけで生まれて初めての着ぐるみ体験はゴジラ。
狭くて、臭くて、重くて、ひどく孤独だったのを覚えています。

昔、剣道をやっていたのですが、
剣道の防具を着たときの、あの匂いと重さ、あれの100倍くらい。
さすがゴジラって感じです。

でも、それを着てポーズとっていると、
しばらくして自分が本当にゴジラのような気がしてきたというか、
そのまま外に出て街を破壊しても許される、みたいな、
へんな高揚感を感じたのを覚えています。

小さなのぞき穴から見るまわりの世界はひどく遠く思えるし、
編集者やカメラマンは、ぼくをぼくとしてではなく、
完全にゴジラを見る目で見ている(ような気がする)。
今思えば、着ぐるみってすごい、着ぐるみ効果っですごい。

もしもずっと着ていたら、本当にぼくはゴジラと化すのではないか?
というのは大袈裟かもしれないけど、
まったく想像もしていなかったゴジラとの一体感に、
自分でもちょっと驚いていました。

で、本当は、ここから先、
この着ぐるみの話にひっかけて「役を演じる」というのはこれに似てるかも、
みたいなことを書こうと思っていたのですが、
うまくまとまりそうにないし、そもそもたいした話でもないので、やめます。

というわけで、かつて本物のゴジラになったことがあるという、
ささやかな自慢話(?)ですね。

あ、最初に戻りますが、岸本佐知子さんのエッセイ集は、
すごくどうでもいい話ばかりで、なんとも形容しがたくて、
読んだらすぐ忘れそうな文章ばかりで、オススメです。









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Author:TheaterNautilus
シアターノーチラス代表・今村幸市によるブログです。
年に2~3回、オリジナルの脚本による芝居を上演しています。
現在、再スタート公演に向けて準備中。
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