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2019-09

「万引き家族」から「仁義なき戦い」へ

『万引き家族』を観たあと、
何でもいいから「家族」をテーマにした映画を観たいと思って、
借りてきたのは前々から観たかった『仁義なき戦い』。

ヤクザ映画の金字塔というだけでなく日本の映画史に残る傑作、
そう聞いていながら今まで見ないできたのですが、
やはり、ただのヤクザ映画というだけではない、見応えのある作品です。

終戦直後に始まった広島での暴力団同士の抗争を描いた映画ですが、
この話の底流には「家族」への渇望がひそんでいます。

戦争が終わった直後、家族を失って孤独になった人たちが、
闇市の中でやっと飢えをしのぎながら、家族のような強い絆を求めた。
盃を交わして義兄弟になることで疑似家族に加わる、
そのことが戦争によって孤独になった人々の気持ちを支えていった。
それが戦後の暴力団の成立と深く関わっていると、何かで読みました。

『仁義なき戦い』は、それを考えながら観ると、
疑似的なものでもいいから「家族」のようなつながりの中で生きたいと思う、
人間の、というか、日本人の(?)心性が描かれているのを感じます。

それは、家族ではないのに家族として生きていた『万引き家族』の
あの人々の孤独ともつながるような気がします。

万引きでつながっていた家族と、暴力でつながっていた家族、
どちらもニセモノの家族だけど、それは彼らにとって必要な場所だった。

ちょっとネタバレになりますが、『仁義なき戦い』の最後のほうで、
松方弘樹が殺される場面があります。
松方弘樹は組の中でのし上がっていくのですが、
最後はふつうの女性と結婚して子供もできます。
その子供のためにオモチャを買おうとおもちゃ屋さんに入る、
そこで昔の仲間に射殺されます。手に人形を持ったまま。

これはとても意味のある場面だと思います。
ヤクザという疑似家族から離れて本当の家族の中で生きようとした、
その願いもむなしく、疑似家族の人間たちに殺される。
恐ろしくて悲しい最期です。

この場面を見ていて思い出したのは『ゴッドファーザー』のある場面。
マーロン・ブランドが殺されるのは、他のギャングとの抗争の最中ではなく、
車を下りて八百屋に入り、果物を買ったときです。確かそうですよね?
ひとりの家庭人に戻った瞬間に射殺される、その皮肉が、
松方弘樹の最期の姿に重なります。
なんといってもマフィアは、はっきりした「ファミリー」だし。

人間は、いろんな形で「家族」というつながり無しには生きることができない。
そのことをあらためて思います。

そういえば、高校時代だったか、英語の先生に、
Familyファミリーの語源は「奴隷・召使」だと聞いたことがあります。
人間は家族というつながりに隷属する生きもの、
そういう解釈の仕方もどうかと思いますが、なんだか皮肉です。

『万引き家族』はいろいろ言われていますが、
家族とは何だろうということをあらためて問い直す良い映画だと思います。

ぼくは、あまり家族の温もりとか、そういうものを知らずに育ち、
ずっと生きてきたので、なおさら、家族のことを考えます。
遠いもの、手が届かないもの、そんなものとして。

だから、家族を求める人々、家族のつながりを渇望する人々の物語に、
惹かれるのかもしれません。









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ゴッドファーザーの件ちと違います。

果物を買った時ビトーは撃たれますが死にはしません。死ぬ時は後に「ファミリーを継ぐのはやだ」と言ってオペラ歌手になるマイケルの息子・孫のアンソニーと庭で遊んでいる時です。心臓発作か長年の疲労の蓄積か死因ははっきりしませんが、敵対ファミリーが殺したわけではない事だけはハッキリしてます。ですがこれは彼がまだドンだった頃、五大ファミリーと長男暗殺の件で行った手打ちを事をマイケルが引き継ぎ、五大ファミリー(+モー・グリーン)を殲滅する伏線になっています。


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Author:TheaterNautilus
シアターノーチラス代表・今村幸市によるブログです。
年に2~3回、オリジナルの脚本による芝居を上演しています。
次回公演は2018年10月です。
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