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2018-11

全然異なるふたつの映画が、じつは同じ時代を描いたものだった。

どういうわけかいろんなところからライター仕事が入ってきて、
切れ目なく仕事の原稿を書いている今日この頃です。
「フリーライター」の看板を下ろさなくてよかった。
この調子で、フリーライターとしてのアイデンティティを取り戻せる、
そうなればいいなと思います。そうなって欲しい。

出版不況については相変わらず良いニュースは聞きません。
しかし逆説的にいえば、どんなに本が売れなくなっても、
紙媒体がこの世から消え去ることはない、とも思う。
人類が遺す貴重な文化遺産としての紙の出版物はきっと残る。
そこは頑固に信じていたいです。

そんなわけで月曜締切りの仕事しながら、合間に観た映画が2本。
ひとつは『光の雨』。監督は高橋伴明。
赤軍派と革命左派が連合赤軍になって起こした、
いわゆる山岳ベース事件を描いた映画で、
あさま山荘事件を起こす直前までを映像化しています。

これ、とても面白かった。すごく良かった。
山岳ベース事件、要するに学生たちが次々と総括、つまり殺されます。
いろいろな理由をつけられ、仲間たちから壮絶なリンチを受け、
次々と死体になっていく「革命を夢見た学生たち」。
当然、残酷な場面も多いのですが、面白いのは、それを、
「山岳ベース事件を描く映画を撮影している現代の人々」として描いている点。

『光の雨』は、出演者たちのオーディション場面から始まるのですが、
山岳ベース事件が実際に起こったのは1971年から72年にかけて。
それに対して、映画の出演者は2000年代を生きる若者たち。
彼らは連合赤軍も学生運動も知らない。
「なんでこんな悲惨な事件が起こったの?」とポカンとしている。
ポカンとしながら、凄惨なリンチシーンを演じている。

そのふたつの時代の距離感、「今はもう1971年ではないのだ」という感覚。
出演者たちの「なぜ?」という疑問符が、そのまま、2000年代を生きるぼくたちの、
「なぜあんな学生たちがいて、あんな事件を起こしたのだ?」という疑問と重なる。
なるほど、うまい描き方だなと思いました。

1971年を生きた若者には1971年なりの戦う理由があったし、
2000年代を生きる若者には、今だからこその戦いがある。
その時代ごとに存在している、戦いの理由。
どっちが正しいというわけでもなく、時代というものの真実。
それが、なんか良かったな。

高橋伴明監督といえば、大学時代、友達と
「オールナイトでポルノ映画を観よう」と場末の映画館に出かけると、
たいていこの監督のポルノ4本立てとかやってました。
でも、『光の雨』、よかったです。

もう1本観たのは『美代子阿佐ヶ谷気分』。
かつて漫画雑誌ガロでかいていた安部慎一という漫画家の半生を描いた映画。
美代子という恋人(後に奥さんになる)とふたりで阿佐ヶ谷で住んでた日々を、
「美代子阿佐ヶ谷気分」という連作漫画にした、それが原作です。

漫画の場面そのものを映像化したような場面もたくさんあって、
ただし、漫画というよりは、詩のような匂いのする、しみじみとした映画。
漫画で生きていこうとする若き日の安部慎一が、荒んだ生活を送り、
やがて後半は人間的におかしくなって破綻していきます。

で、ふと気づいたのですが、この映画に描かれているのは、
1971年から数年間の東京阿佐ヶ谷。
つまり、連合赤軍が雪山で次々と仲間を殺していた時期と、ほぼ同じ。
まったく異なる映画『光の雨』と『美代子阿佐ヶ谷気分』は、
同じ時期に生きた、同じ年代の若者を描いているのです。

ひとつの時代を横に切り取ったとき、まったく異なる生き方をしている若者たち。
もしかしたら安部慎一は山岳ベース事件のニュースを観ただろうし、
連合赤軍の中には、雑誌ガロで安部慎一の漫画を読んだ学生もいただろう。
しかし、それでも彼らの生き方は、まったく重ならない。
お互いに、たまたまそこにあった「時代の背景のひとつ」でしかない。

理想の国家を夢見て、革命を起こそうと命をかけた若者がいて、
漫画を描くことで自分の命をすり減らし、精神を病んだ若者がいる。
同じ時代、同じ国の、別々の場所。

2本の映画を観て、たまたま同じ時代を描いたものだったのだと気づいたとき。
時代の、人間の、夢や理想というものの、
不思議な一面をみたような気がしました。

そんな週末の、小さな驚き。
でも、原稿の締め切りも、ちゃんと守ったです。はい。




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TheaterNautilus

Author:TheaterNautilus
シアターノーチラス代表・今村幸市によるブログです。
年に2~3回、オリジナルの脚本による芝居を上演しています。
次回公演は2018年10月です。
http://theaternautilus.
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