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2018-12

ふつうの人々は、きっと、ふつうの服を着ている

昨夜は通し稽古で、みんな衣装(候補)を身につけて、
スタッフの前で全体を通しました。
当然のことながら役者さんたちは、衣装や髪形、靴などについて、
ぼくにいろんな質問をしてくれます。ありがたいことだと思います。

しかし、それに対して、ぼくはよく「ふつう」という言葉を使います。
「ふつうがいいね」「ふつうの感じにしよう」「ふつうっぽいのがいいよ」
「ふつう」という言葉くらい曖昧なものはないので、役者さんは困る。
自分で言ってて「ああ、申し訳ないなあ」と思うのです。

他の人の「ふつう」と、ぼくの「ふつう」は異なる。
それがわかっていても、やっぱり使いたくなる「ふつう」という言葉。
それは、ぼくが書いてる芝居は、ふつうの人々の、ふつうの日常生活、
それが基盤にあるからです。

観ているお客さんに、「ああ、自分と同じ、ふつうの人たちの物語だ」、
そう思ってほしい。いつもそう思いながら芝居を作っています。

レイモンド・カーヴァーの短編に、
『ささやかだけれど役に立つこと』というのがあります。

パン屋に行って、幼い息子の誕生日のケーキを注文する若い母親。
特注のすてきなケーキです。ところが皮肉なことに、
誕生日の日、息子は自動車事故で、生死の境をさまよう状態に。
当然、母親も父親も心配で頭が混乱しています。
そんなふたりのところへ、陰湿な嫌がらせの電話がかかってくる。何度も。

ただ息子の誕生日を祝いたいというふつうの望みが絶たれた、ふつうの夫婦。
そのふたりの1日が描かれる短編です。

「ふつう」は、どこにでもあるけど、「ふつう」は、とてもはかない。
ちょっとしたことでふつうではなくなってしまう。
それでも、それに向き合うのは、あくまでも「ふつう」の人たちです。

ここから先はネタバレっぽくなりますが、
その陰湿な嫌がらせの電話をかけていたのは、ケーキを注文したパン屋。
ケーキを取りに来ないことへの腹いせでした。

それに気づいた夫婦は、パン屋に行き、ののしります。
そしてパン屋は……どうしたかは、ぜひ読んで欲しいのですが。

みんな「ふつう」だなあと思います。夫婦もパン屋も。
その「ふつう」が、何かで壊れたりズレたりしていく。

ぼくがいつも芝居で描きたいのは、そういうことではないかと思います。
そんな気持ちで今まで芝居を作ってきました。

だからこそ、役者さんに衣装について質問されても、
口に出るのは「ふつう」という言葉。
話はそこに戻ります、言い訳です(笑)。

ごめんね、みんな。わかりにくくて。

お客さんから見ると、きっと衣装は、ごくふつうに見えると思います。
でも、その「ふつう」は、みんなでかなり苦労して選んだ「ふつう」です。
衣装を考えるとき、いつも、あらためて「ふつう」って何だろう?と思います。

ふつうの衣装の、ふつうの人々、ぜひ観てください。
明日から10月。いよいよ初日が近づいてきました。

『となりの事件』

10月10日~14日 下北沢/OFFOFFシアター









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TheaterNautilus

Author:TheaterNautilus
シアターノーチラス代表・今村幸市によるブログです。
年に2~3回、オリジナルの脚本による芝居を上演しています。
次回公演は2018年10月です。
http://theaternautilus.
web.fc2.com/index.html

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