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2019-02

言葉が通じないということの本当の悲しさ

今年最後の原稿仕事を昼前に送り、
読んでおかなきゃならない本があったのでそれを調べて、
中野のブックファーストに行ったけど、どれもなくて、
杉並区内の図書館で検索したら何冊かあったので、
とりあえず高円寺図書館に向かって……
なんてことしていたら、かなりの距離を歩くことになって、
あー、へとへとです。

で、結局、探していた本が10冊以上あったのに、1冊も入手できず。
予想はしてたけど、くそー、奥泉光の新刊欲しかったなー、でも高かったなー、
高円寺図書館の人、最初に電話したときは「その本、在庫ありますよ」
なんて言ってたのに、2回目の電話では「盗まれたみたいで、ありません」。
そうか、図書館の本を盗むやつがいるのか。
図書館の人、かなり憤慨してたので、よくあることなのかな。


昨夜は、録画してあったNHKのドキュメンタリーを見てました。
イゾラドという南米アマゾンの奥地に住む部族、
まったく文明社会と接することなく、大昔の人類そのままの生活を続け、
30年前に発見されるまで、その存在も知られなかった人々。

2年ほど前に、このイゾラドと何とかして接触しようとしたブラジル政府の試みを
丹念に追ったドキュメンタリーがありました。

ちょうど『ミニチュア』の稽古中にそれを見て、
稽古場でみんなに話したのを覚えています。

言語が通じない同士が、なんとかして意思の疎通をはかり、
交流したいと願ってはみても、それはそう簡単ではない、
結局、そのときのブラジル政府の試みは失敗に終わります。

言葉が通じないということが、どんなに悲しいことか、
どんなに残酷なことか、どんなに虚しいことか。

ぼくたちは、暮らしの中でそんな場面に出会っても、
「ああ、またか」「本当にわかってくれないもんだなあ」なんて文句を言い、
それでも、なんとなく素通りしてしまうことが多い。

でもそのドキュメンタリーは、言葉が通じないということが、
人間にとってどんなに絶望的なものなのかを伝えていました。

で、昨夜観た番組は、そのイゾラドの最後のひとりを追ったもの。
年老いたイゾラドのひとりが、長年にわたって、文明人たちと一緒に生活した、
その最後のほうの記録です。

30年もの間、一緒に暮らしたのに、結局、イゾラドとブラジル人との間で、
お互いの言葉を理解することはありませんでした。
イゾラドは時に、長々と話すのですが、まわりの誰ひとりとして
何を言っているのかわからない。30年もの間。

そんなに長い年月にわたって、意味のわからない言葉を聞き続けてきた人々と、
自分の言葉を理解していない人々に向かって語り続けてきた最後のイゾラド。

伝えたい者と、理解したい者と、その両者の顔には、
ただ困惑したような作り笑いがあるだけでした。

言葉が通じない、思いが伝わらない、
それは多分、この世で一番の悲劇のひとつです。

ぼくたちは、周りの人と言葉が通じる、思いを伝えている、
それはとても幸せなことです。

それでも時々思います。本当に伝わっているのだろうか。
伝わってるフリをしているだけではないだろうか。
ひとつの言葉を、ふたりの人間が、ただわかったようなフリしてるだけ。

演劇は、会話劇は、言葉を使って思いを伝えること、
言葉を使って思いを伝えられること、それを「演じる」。
人間は「フリができる」生き物だから、
そこにどれだけの真実を見出せるのか。

相手の言葉を聞いてるだけで理解はしていないイゾラドとブラジル人、
その顔に浮かぶ作り笑いは、きっとぼくたちも無縁ではない。
きっとぼくたちも、しょっちゅうあんな笑顔を浮かべてる。

番組を見ながら、そんなことを思いました。

ところで、そのイゾラドと30年間一緒に生活してきた
ある言語学者がいます。なんとかして意思の疎通を試みた、
しかしダメだった。……ところが、その言語学者が、
唯一理解したことがありました。

何を言ってるのか詳しくはわからないが、
たったひとつだけ、「おそらく今、彼は、このことを話している」
そう予想できたことがあります。

それは、「死」。仲間の死です。
「おそらく今、彼は、仲間の死について話している」
それだけが、たったひとつ伝わってきたことでした。

「死」を意味する単語が、かろうじてわかる。
そして、それを語るときの、イゾラドの悲しげな表情。

仲間が死んでしまったことの悲しみは、
すべての人間にとって共通なのでしょう。

言葉は通じなくても、「死」の悲しみだけは、なんとか共有できる。
すごく皮肉なことだけど、
それが人間というものなのかなあとも思います。

言葉は、「通じて当たり前」、そう思いがちだけど、
きっと本当は、何も伝わっていないこともある。
ただ伝わってるフリしてるだけ。
そんなことを思わせるドキュメンタリーでした。

言葉が通じないことの悲しさを想像すると、
恐ろしくなります。









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TheaterNautilus

Author:TheaterNautilus
シアターノーチラス代表・今村幸市によるブログです。
年に2~3回、オリジナルの脚本による芝居を上演しています。
次回公演は2018年10月です。
http://theaternautilus.
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