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2019-09

創る人は自由、同じように観る人だって自由

暑くて眠れなくて昼間はなんだか夢の中にいるようです。

朝、ボケッとテレビを見ていたら、「ん?」と思うことがありました。
愛知トリエンナーレの『表現の不自由展』の中止についての話題です。

「平和の少女像」に対する一般市民の反発が強くて3日間で中止、
それに政治の介入があったとか、表現の自由は守られるべきとか、
そんなような話の中で、だれかが、ピカソの『ゲルニカ』について話してました。

『ゲルニカ』はスペイン内乱の悲劇を描いた大作ですが、
発表当時は政治的な背景が色濃いこの作品を
批難したり嫌悪したり攻撃したりする人が大勢いました。

ピカソ自身は『ゲルニカ』には政治的な意図はないと明言したそうですが、
見る人はそうは受け止めなかった。

この絵はマドリードの美術館に展示されていますが、
1992年までは防弾ガラスで覆われていました。
政治的心情によって誰かが『ゲルニカ』を損傷しようとするのを守るためです。

描いたピカソの気持ちとは無関係に、描かれた作品はひとり歩きします。
創った人に創造の自由があるように、観る人にも鑑賞の自由があります。
敵意や反感を抱く人がいても、それをまわりが押しとどめることはできません。
だからこそ、『ゲルニカ』には防弾ガラスが必要だったわけです。

「平和の少女像」も同じことで、それをどんなふうに観て、どう感じるかは自由。
今回、この像が展示されることに対して、
ものすごく嫌悪感や敵意を持つ人が少なからずいることは、すごく納得できるし、
主催者側は、予想もできただろうと思います。

結局、この展覧会は「ガソリン持ってくぞ」という脅迫があったために、
やむなく中止になりましたが。

べつに、その脅迫した人を擁護してるのではなく、
また、「平和の少女像」を批難してるのでもないです。

ただ、今の、この最悪な日韓関係の中で、
そして過去にこの像が韓国でどう政治的利用をされてきたかを考えれば、
日本の鑑賞者がこの像にどんな感情を抱くか、
あらかじめ配慮があってもよかったように思います。

「芸術作品なんだから、政治的心情とか考えないで、フラットな気持ちで向き合うべき」
というのは、ある意味「きれいごと」です。理想論です。

そうではなかった芸術作品は、今までたくさんあったはずです。

『ゲルニカ』だって、防弾ガラスがなくなるまでは多分、50年くらいの年月が必要でした。
50年の時間の中で、スペイン内乱が過去の「歴史的事実」となり、
人々は、やっと冷静に、その作品と向き合うことができたのです。

50年後であれば、もしかしたら日本人も「平和の少女像」を、
もっと冷静な目で、芸術的に鑑賞できたかもしれません。

しかし、今、この状況で、このタイミングで、日本国内でこの像を目にしたら、
そりゃあいろんなことを思う人がいるだろうなあ、という感じです。

「芸術作品、創造物として、虚心坦懐に、冷静に鑑賞すべきだ」というのはわかりますが、
しかし、芸術作品をどう観るか、というのもひとつの自由だし、
「こんなものブッ壊してやれ!」という気持ちになるのも、
それはその人の向き合い方だと思います。

芸術とは、それを承知の上で生み出されるもの。
作者だけでなく、芸術作品そのものも、戦い続けなければならないのだと思います。

「表現の不自由」と名づけられた美術展でしたが、
「鑑賞するほうの自由」という視点が欠けていたのかもしれません。

……と、ここまで書いてきて読み返すと、
なんか、僕もこの像の展示を否定しているようにも思えますが、ちょっと違います。

タイミングが悪い、時代が悪い、と思っただけです。

2019年、日韓関係がこんな状態のときに、「平和の少女像」を国内で展示したら、
結局、こうなりました……という、ひとつの現象、事実、
それがわかっただけでも、この出来事は価値があったと思います。

芸術作品には、時代を超えて、政治的心情も超えて、すべてを超越して、
普遍的な価値がある……そう思われがちですが、そうとも限らない。
創り出す人も人間なら、それを観る人もやはり人間。

なんてことを思った1日でした。





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TheaterNautilus

Author:TheaterNautilus
シアターノーチラス代表・今村幸市によるブログです。
年に2~3回、オリジナルの脚本による芝居を上演しています。
次回公演は2018年10月です。
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