FC2ブログ

2019-02

「ある画家」の名前

ここ2年ほど、たまにネットで検索してみる名前があります。
ある画家の名前です。

彼のことを「画家」と呼ぶとき、
ぼくの体の中にはここに書ききれないほどのいろんな思いが湧きあがります。

彼とは同じ高校、同じ美術部、絵の道に進みたくてふたりとも美大を目指していました。
高校卒業後はふたりで東京に出てきて、同じ美大系予備校に入学。
ふたりして美大に入るのを夢見て絵を描き続けていました。

ただ、今思えば、ぼくは高校時代から気づいていた、認めたくはなかったけど。
彼には、本当の意味で才能があった。そして、ぼくにはなかった。
彼の絵には本当に才能のきらめきがあり、将来も絵を描き続けるんだろうなと思わせた。
そしてぼくは、ただ美術の成績がいいというだけの生徒。そんなヤツはゴロゴロいた。

美大系予備校に入っても、彼は才能を伸ばし続けるように見えた。
ぼくは、自分にはとても無理だ、と早々に限界を感じていた。

東京に来て1年が過ぎ、ぼくは彼に何も告げることなく、その予備校を辞めた。
そしてあらためて受験勉強をして、美術とは何の関係もない大学へと進みました。

彼とは、予備校時代に会ったきり。それ以来もう2度と会っていない、
彼は、ぼくがふつうの大学に入ったことも知らないだろうし、
ぼくも、彼がその後どんな人生を歩んだのか、まったく知りません。

その後、ぼくは絵とは無関係な日々を送ってきました。
でもときどき、彼のことを思い出していました。
どこでどうしてるんだろう、今も絵を描いてるんだろうか、画家の夢をかなえたのだろうか。

2年ほど前、ふと思いついて、ネットで彼の名前を検索してみました。

そして、ある画家のブログの中に彼の名前を見つけました。
最初は同姓同名かもしれない、と思った。別人かもしれない。
しかし、読んでみて、確信した。
「今日、個展会場に●●くんが来てくれた。
足早に画廊に入ってくると、何も言わずに絵の前で腕を組み、
しばらくすると、また黙ったまま足早に去る。彼はいつも、そうだ」
そう、高校時代から、いつも彼はそんな人だった。
その短い文章を読んで、彼の姿が目の前によみがえってきた。
そのブログによると、やはり彼は今、画家としてやっているらしい。

彼自身のブログなど無く、彼の知り合いのブログで少しだけ知った、今の彼の姿。
そんなことも、なんだか彼らしいと思いました。

今も絵を描き、画家として活動しているらしい彼。
今も、人の絵の前でじっと腕を組み、何も言わず、足早に去っていく彼。

彼は、もうぼくのことなど覚えてないだろう、思い出すことはないかもしれない。
でもぼくは、そうやって彼が今も絵を描いて生きていることを知って、
まるで彼が、ぼくの夢の分まで生きていてくれてるような気がしました。

10代の頃にみたぼくの夢は、今も彼のなかで生きている、
彼には迷惑かもしれないが、そんなふうに勝手に思いました。

今、彼がどんな絵を描いているのか、どうしても見たい。
2年ほど前から、たまに検索してみます。
しかし残念ながら、個展の情報などは出ていない。
2年ほど前までは個展やグループ展をやっていたようだが、最近はやってないらしい。

それでも、いつか、彼の絵を見てみたくて、
次の個展の情報が出てないかと、たまに検索してみるのです。
彼の絵と向き合うことは、同時に、10代の頃の自分の夢と向き合うことでもある、
彼と会いたいし、10代の頃の自分にも会いたい。

……じつは、昨夜、やはり彼の名前を検索していて、
彼の作品を発見しました。

初めて見る、今の彼の絵。

それは横長に描かれた風景画でした。

高校時代の彼の絵とは少し違っていた。
しかし、緻密に描かれた無数の線の重なりを見ているうちに、
何かに取りつかれたように指先を小さく動かす彼独特の筆の使い方を思い出しました。

簡単な略歴が書かれていたのですが、もちろんそこには、
ぼくたちの生まれ故郷が記されていました。

いつか、彼の絵を自分の目で見てみたい。
彼の絵の前に立ってみたい。
もちろん、彼にも会いたい。

その日が待ち遠しい。
そう思いながら検索してみる、
彼の名前です。










スポンサーサイト

● COMMENT FORM ●


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://theaternautilus.blog99.fc2.com/tb.php/161-ae710f27
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

NEW ENTRY «  | BLOG TOP |  » OLD ENTRY

プロフィール

TheaterNautilus

Author:TheaterNautilus
シアターノーチラス代表・今村幸市によるブログです。
年に2~3回、オリジナルの脚本による芝居を上演しています。
次回公演は2018年10月です。
http://theaternautilus.
web.fc2.com/index.html

最新記事

リンク

このブログをリンクに追加する

月別アーカイブ

最新コメント

最新トラックバック

検索フォーム

RSSリンクの表示