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2019-02

テントのこっち、テントの向こう

本日は唐十郎の『盲導犬』を観ます。
僕が芝居を好きになったきっかけは唐十郎でした。
新宿花園神社の境内に張られた巨大な赤テント、中に入ると、そこは別の世界です。
演劇ファン唐十郎ファン、という人たちに混じって、いかにも近所のおじさんおばさんたちが
「何かおもしろそうなものやってるから、ちょっくらのぞいてみっか」
みたいな雰囲気でムシロの上であぐら組んでる。

何百年も前から、芝居というものは、そんなふうにして、
人々のあわただしい日常から少しだけ離れた場所で、
非日常への摩訶不思議な入り口をポッカリ開いて待ち伏せている、
そんなものだったんだろうな……と勝手な妄想が広がる。
唐十郎のそんな芝居に興味を持って、僕は、芝居を観るようになりました。

こう書くと、唐十郎のテント小屋の中は、日常から切り離された別世界、
と思うかも知れないけど、じつはそうではありません。
テントというのは、いわば布切れ1枚。
その外側には、大都市東京の雑踏が広がり、芝居の最中にも、
車の音、近くを歩く人々の話し声、雨が降れば雨の音、風が吹けば風の音が聞こえます。
つまり、赤テントは間違いなく、ふだんの日常、雑踏、混沌とつながっているわけです。

まるで「この世」と「あの世」との境界線にポツンと存在している芝居空間、
そのなんともいえず心もとない、はかない、しかし人間臭い熱気に包まれた空間、
ホンモノもニセモノもごちゃごちゃ、真実とマガイモノ、インチキ、イカサマ何でもアリ、
そんなものに、きっと魅せられてしまうのだと思います。

ここにいる人たちは、もちろん真面目にひたむきに生きる小市民であるけれど、
当然のことながら、いつも誰かを騙したり、騙されたり、汚い言葉でののしったり、傷つけたり、
ブン殴ったり、泣かされたり、殺したいと思ったり、セックスしたり、くよくよと後悔したり、
秘密を作ったり、ひそかに血を吐いたり、死ぬことにおびえたり……
まさにもう、熱い息を吸って、吐いて、吸って、吐いて、
時に清く、りりしく、時にみっともなく、薄汚く、そうやって生きてる。
人間とは、まさに、クソッタレなものであります。唐十郎を見てると、そのことを思い出します。

ゾクッとするのは、唐十郎の芝居の最後の場面。
多くの場合、最後に舞台の奥がパッと開いて、いきなり、テントの外が見えるのです。
テントの外でラストシーンを繰り広げる役者たち、
しかしそこは野外なのだから、東京の街が見え、ふつうに通行人もいます、時には車も……
その瞬間「あの世」と「この世」が混じり合い、どっちがどっちかわからなくなる、
あの眩暈のような感覚に、脳がビリビリします。

ただ、『盲導犬』のラストは、テントが開くのとはちょっと違う設定なので、
果たしてどうなるのか、今日は、そこも楽しみ。

雨、降るんだろうか。
テント公演を雨の中で観るのはつらいな、と思いながらも、
世の中のどこかで雨が降ってるってことは、どこかでは晴れてるってことだ、
「世の中」っていうデカイ単位で考えれば、雨が降ろうが降るまいが、同じだな。

降るなら、降れ。ざんざん降れ。






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TheaterNautilus

Author:TheaterNautilus
シアターノーチラス代表・今村幸市によるブログです。
年に2~3回、オリジナルの脚本による芝居を上演しています。
次回公演は2018年10月です。
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