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2019-02

ある映画の話

今日は、あるイタリア映画のニュースを見ていて、
「へえ」と驚いたことがあります。
イタリアでは1978年に精神科病院廃絶法が成立して以来、
精神病院というものがないそうです。
不勉強な僕は知りませんでした。よく知られた話なんですか?

どういうことかというと、イタリア社会では、
精神的に病んだ人もそうではない人も、同じように働き、生活している。
実際イタリアには、そういった人々が経営する企業やホテルがたくさんあるとか。

世の中には「ふつうの人」というのが大勢いて、
そこから少しズレてるように思われる人はマイノリティとして、
隔離されたり、見て見ぬフリされたり、いろんな意味で特別扱いされたりする、
どちらかといえばそれが当たり前の日本の社会からすれば、
精神科病院廃絶法というのは、一種の理想郷の考え方のような気もします。

でも、この「理想郷のような」という感じ方に、
すでに何か、やましい気分が混じってる。
「世の中から精神病院をなくす」というのは、それは理想郷でも何でもなくて、
人間として当たり前の感じ方、考え方なのかもしれません。

イタリアというので思い出すのは、映画監督のフェリーニです。
フェリーニは自分の映画の出演者を「顔」によって決めたらしい。
いや、本当に「顔」だけで決めてたわけじゃないだろうけど、
出演者探しのためにヨーロッパ中を歩き回り、
イメージどおりの人を見つけると、たとえ素人でも映画に出演させる。

そうやって作られたフェリーニ映画の出演者には知的障害者も少なくありません。
知的障害者とまでいかなくても、何かヘンだなという人が多い。
しかしそれでも、フェリーニ映画の世界の中では、
彼らは何の違和感もなく、摩訶不思議な世界のひとつのピースとして輝いている。

精神科病院廃絶法のことを知ったとき、
まっさきに、そんなフェリーニの映画のことを思い浮かべました。
あの人、確かにちょっと違う、何か違う、どこかヘンだ、
でもちょっと離れて見たらみんな同じ、ひとつの世界の中にいる、
きっとそんな感じなんでしょうかね。

映画ついでに、もうひとつ思い出したのが、
フィリップ・ド・ブロカの『まぼろしの市街戦』という映画。
イタリア映画ではなくフランス映画ですが。

第一次世界大戦末期、敗走するドイツ兵が、
フランスのある小さな村に爆弾をしかけることを命令される。
しかし村人たちは全員逃げたあと。
ただひとつ見捨てられた精神病院の患者だけが残っていて、
彼らは村中にちらばり、思い思いの「役」を演じて楽しんでいる。
そこにまぎれこんでしまったドイツ兵は……という物語。

狂気に満ちた奇妙な人々の中に、爆弾をかかえてまぎれこんだドイツ兵。
しかしやがて、どっちが狂気なのかわからなくなっていく。
ラストシーンがとても印象的な映画です。

何が正常で、何が正常ではないのか、何が異常なのか、
そんなもの誰が決めるのだろう、
正常と異常との違いとは何なのだろう。
そんなことを問いかける映画なのかもしれませんが、
そんな難しいこと考えなくても、
そのラストシーンにホッと安心してしまいます。

社会というものがある限りマイノリティというものの存在は絶対になくならない、
という考え方もあるでしょう。
マイノリティとどう向き合うかがその社会の成熟度を示す指針だ、
という人もいるでしょう。
どれが正しいのかはわからない。
マイノリティというとらえ方そのものが間違いだとする人もいるだろうし。

少なくとも見て見ぬフリをするのではなくて、
きちんと向き合うことから始まる、というのだけは確かな気がします。
そういう意味で日本社会は、どれくらいの成熟度なのだろう、
……なんてことを考えてました。

『まぼろしの市街戦』をちょっと観たくなった。
あと、フェリーニの『アマルコルド』も。
『アマルコルド』の音楽は、どうしてあんなに悲しいのだろう。
それから、船の場面!!
観たことある人なら、船の場面というのが、どの場面のことか、
わかるよね? ね?

よし、明日はレンタル店に行こう。



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TheaterNautilus

Author:TheaterNautilus
シアターノーチラス代表・今村幸市によるブログです。
年に2~3回、オリジナルの脚本による芝居を上演しています。
次回公演は2018年10月です。
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