FC2ブログ

2019-02

天使になる夢

昨日は「原発を手にするには人間はまだ未熟なのかも」なんて
生意気なことを書きましたが、
たまたま面白い小説を読みました。

プリーモ・レーヴィの『天使の蝶』という短編集。
この表題作『天使の蝶』はロマンチックな題名ですが、
中身はかなりおぞましい。

主人公はひとりの科学者。
彼は「人間とは本当は天使になる前の未成熟の段階」
という考え方にとりつかれている。
つまり、成長すれば天使なのだが寿命が短いために
まだ青虫の段階で死んでしまう、というわけだ。

で、彼はその考えに基づいて「生体実験」を行うのだが……
後半は、ちょっと暗く憂鬱になるような展開。

プリーモ・レーヴィは作家でありながら化学者でもあり、
ユダヤ人なのでアウシュビッツ強制収容所を経験している。
おそらく、そのことも反映されてる短編です。
どこかにヒトラーの優性学や選民思想が歪な形で潜んでいる、
なんてことを思わせるのが、ひとつのミソかも。

「人類は、まだ未熟な段階にある」「未成熟な生き物である」
という考え方は、たとえばアーサー・C・クラークの
『地球幼年期の終わり』という有名なSFをはじめとして、
いろいろな形で表現されています。

戦争や犯罪、差別や虐待などを通して、
(チェルノブイリや福島の原発事故もそうかもしれません)
きっと人類は自分たちのことを振り返り、
「まだまだおれたちって未熟な生き物だな、オトナじゃないな」
なんて、ある種のうしろめたさを感じていて、
それがそういう小説だとかナンだとかの形になって残されていく…
というのは、かなり強引な妄想かもしれませんが、
「人間=未熟な段階」という考え方は人類の最後の良心かもしれません。

プリーモ・レーヴィの『天使の蝶』の、
「人間は成熟したら天使になる」という考え方は、
その中でもずいぶんとロマンチックというか、
神がかった発想のように思えますが、しかしそこにあるのが、
「人間はやがて天に近づく存在になる、いや、なってほしい」
という切なる希望だとすれば、
逆にそこに人間の悲劇というか虚しさを感じます。

要するに「いや、なれるはずがない、なれっこないのだ」
という逆説的な小説なんじゃないかと……。

話はすこしそれますが、
今の人類は、DND的に元をたどっていけば、
約20万年前にアフリカに住んでいたひとりの女性にたどりつく、
つまり、全人類は、そのひとりの女性の子孫である、
という考え方は、今や定説になるつつあるそうです。

その女性の子孫が約6万年前に世界各地に移動を始め、
それが現在の人類へとつながっていくわけですが、
じつは約7万年前に1度、人類は絶滅しかかったのだとか。
個体数が約2000人まで激減したらしいのです。

たった2000人。
厳しい自然環境、しかも医学の発達もないから、
病気なんかが発生すれば、すぐに死に絶えてしまう数字。
現在ならすぐに「絶滅危惧種」に認定されるでしょう。
よく持ちこたえたなあと思います。2000人かあ。

これが事実だとすると、
人類はまだ未成熟な存在である、というのも、
ますますうなづける、納得できる、ああやっぱりと思える。
本当なら絶滅してもおかしくない脆弱な動物だった人類、
それがたまたま何かの理由で生き延びているだけ。
まさにマグレで存在しているのが人類。

だからこんなにも、この星に対して迷惑なことばかり繰り返す。
そうだ、無理もないのだ。未成熟でもしかたないのだ。
あーあ、なんだ、そういうことか。

なんてことを『天使の蝶』を読みながら考えてました。

総理が「収束宣言」を出したことが取り沙汰されてます。
あくまでも「収束」であり、「終息」ではない、
「終わった」とは言ってない、「まとまりがついた」に過ぎない。
まあ、どっちでもいいのですが、
地球にとっての「収束」は、
一体いつ、どんな形でつけられるのだろう、と思います。

あるいは、永遠に収束できないままなのか?

そんなことを考えながら人間は、永遠に、
天使になる夢を見るしかないのかもしれません。



スポンサーサイト

● COMMENT FORM ●


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://theaternautilus.blog99.fc2.com/tb.php/487-f42a9c7f
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

NEW ENTRY «  | BLOG TOP |  » OLD ENTRY

プロフィール

TheaterNautilus

Author:TheaterNautilus
シアターノーチラス代表・今村幸市によるブログです。
年に2~3回、オリジナルの脚本による芝居を上演しています。
次回公演は2018年10月です。
http://theaternautilus.
web.fc2.com/index.html

最新記事

リンク

このブログをリンクに追加する

月別アーカイブ

最新コメント

最新トラックバック

検索フォーム

RSSリンクの表示