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2019-05

ある男の声に恋をした右の耳の物語

ツイッターを開いてスクロールしながら、
みんなのつぶやきを読んでいると、
あ、この感じ、そうだ、雑踏の中で立ち止まってる気分。

いろいろな会話、いろいろな言葉の断片が
耳に入ってきては消えていく。

それぞれは何もつながっていない、
誰かが誰かに語りかけてるんだろうけど、
そんなふうには聞こえなくて、
ただ誰もが好き勝手に言葉を口にしているような、あの感じ。

ワンワンワンワン……という雑踏特有の音響効果の中から、
意味のある言葉だけが耳に、脳に、届く。
ツイッターって、あの感じ。

世界には、無限のつぶやきが満ちてるんだね。

ツイッターは、人のつぶやきを均一化する。
雑踏の中をフワフワと歩いていくときの聴覚の、
なんだか不思議な感覚と同じ。あのへんな浮遊感みたいな。

つぶやきたちを眺めながら、
なんだか自分が渋谷ハチ公前とか、
新宿アルタ前とかにたたずんでるような気分になった。

雑踏の中の、安心感と孤独感。

さて、何度か書き記してきました、
「うちの室外機の音がとなりの部屋の住人の聴覚をおびやかしている」
という出来事について。

ぼくは夏も冬もあまりエアコンをつけないし、
エアコンはそもそも部屋に備え付けのものだし、
隣室の住民の訴え→不動産会社→エアコン業者
ということで調べにきた業者さんも、
「うーん、とくに異常はないんだけどねえ」
と言い残して帰っていった。

…というところまでは先日お知らせしました。
まあ、これでこの件はおしまいかな、と思っていたら、
うちの部屋のドアにビニール袋がかけてあり、
中にはチョコレートと手紙が。

手紙には、小さな女の子が書くような文字で、
自分の訴えによりエアコンが使いにくくなって申し訳ない、
今は耳鼻科でもらった薬が効いてるので落ち着いている、
エアコン使ってもいいですよ…というようなことが書かれている。

なんだか、とても恐縮しているようす。
いえいえ、こちらこそすみません、という気持ちになってしまう。
隣室の住人が女性だということも初めて知った。

とりあえず、今はエアコンは一切使ってない。
何かのバランスが崩れてしまいそうな感じがして。

見知らぬ人の耳の奥で何が起こっているのかを想像するだけで、
なんだかひどくドキドキしてしまう。

そう言えば、以前、ある短い脚本を書きかけた。

ある女の右耳が、ある男の声に恋をした。
その右耳はその男の声しか聞かなくなった。
だから人がその女に話しかけるときは、
必ず左耳に向かって声をかけなければならない。

女は、自分の右耳の勝手なふるまいに怒り、恨み、憎しみ、
そしてある日、自分の右耳を切り取る決意をする。

右耳の切除手術をすることになった医師は、
左耳に向かってささやきかける、
「さあ、いいですか、あなたの右耳を切り取りますよ」
何も知らない右耳に、医師の手が伸びるが……

この物語の結末は、いつか舞台化した時に観て下さい。
どうか舞台化できますように。
すばらしく美しい耳を持った女優さんと出会えますように。












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TheaterNautilus

Author:TheaterNautilus
シアターノーチラス代表・今村幸市によるブログです。
年に2~3回、オリジナルの脚本による芝居を上演しています。
次回公演は2018年10月です。
http://theaternautilus.
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