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2019-05

その瞬間に見る青空のことを思い描く

古本屋で1000円で買った荒俣宏『理科系の文学誌』見てたら、
ヨハネス・ケプラーの『ケプラーの夢』について、
「科学者がみずからの夢を文学化したケースの偉大なる実例」
と紹介されていました。

懐かしいね、金森さん!
『ケプラーの憂鬱』という芝居をやったとき、
金森さんのセリフには『ケプラーの夢』からの引用が何か所かあった。
あの芝居も、またやりたいねえ。

さて昨日の話。予定が狂って横浜で3時間も空いてしまい、
あとのことを考えたら歩きまわるのもいやだったので、
交番で「このへんに大きな本屋さんありませんか」と聞いて、
それで山田風太郎の『人間臨終図鑑』を買ってカフェへ。

いわずと知れた、古今東西の著名人の死の場面を
山田風太郎独特の筆使いで描いた名作……ん? 名作?

すごい偉業を残した人物が意外とつまらない死に方していたり、
あらかじめ演出したかのようなドラマチックな死に方の人がいたり。

さっきまで生きて呼吸をしていた人が、
ある瞬間を境にしてふっと生きるのをやめる、
その刹那の光景をいくつもいくつもいくつもいくつも読んでいるうちに、
まわりの風景さえ、なんだか違うように見えてきましたよ、風太郎さん。

生涯を通して旅ばかりしていたような印象のある松尾芭蕉が、
最後は大阪の立派な家の離れ座敷で弟子たちに見とられて死んだなんて、
ちょっと意外でした。ならば「旅に病んで夢は枯野をかけ巡る」は、
死の床での心象風景だったのですかね。

ヘミングウェイや小津安二郎の最期のように痛ましい話もあるが、
マキノ省三の死に際みたいなのを読むと、なぜかスカッとする。

遊牧民は墓というものを作らない、というのは知っていたが、
ジンギスカンのような歴史上の人物さえも、
やはりその遺骸はどこに葬られているのかわからないらしい。

多分どこかの砂の下に埋められ、やがて砂粒の小さなひとつになり、
今も蒙古砂漠の風に吹かれて漂っているのだろうな。

こんな本を読んでいると、当然のように、
自分はどんな死に方をするのだろうと考えてしまう。

まあ、ろくな死に方はしないだろう、それは覚悟してるんだ。
まっとうに生きてこなかったし、思いこみばかり多く、
たくさんの人を傷つけたり悲しませたりしたし、不幸にしたし、
ああ、こう考えると、やっぱりいい死に方しないなあ。

まわりに誰もいなくて、ひとりきりでもいいんだ、
せめて、青空を見ながら死にたいなあ。
ああ、空は青いなあ、と思いながら、
そこに吸い込まれていくような気分の中で息絶える。

ひとりで。

でも、これって贅沢かもな。
こんな死に方した人は『人間臨終図鑑』にはひとりもいない。

ま、いいや、その瞬間を楽しみにしていよう。
どこで、どんなふうに逝くのか。いずれにしても、
その瞬間には「ああ、おれ、こんなふうに逝くのか」と冷静に考えるだけの、
精神的肉体的時間的な余裕がありますように。

1年前にまったく予期せぬ形で命を奪われた方々の御冥福を
心よりお祈りいたします。









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TheaterNautilus

Author:TheaterNautilus
シアターノーチラス代表・今村幸市によるブログです。
年に2~3回、オリジナルの脚本による芝居を上演しています。
次回公演は2018年10月です。
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