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2019-05

一隻の船が夢の島で考えていること

最近、仕事の関係でときどき新木場に行きます。

「木場」だった時代の名残りで今も材木を扱う会社や倉庫が立ち並び、
そこを、海からの冷え切った風が吹きつける街。
釣り人も多いらしく、道沿いに「釣り具」「釣りエサ」の看板も多いです。

新木場駅の北側には夢の島の熱帯植物園があり、
確かそこにはビキニの水爆実験で被爆した第五福竜丸が展示されてるはず。
ずっと昔、1度見にいったはずだけど、よく覚えてない。

電車が新木場の駅に着く前には、
先日開通したばかりの東京ゲートブリッジも見えます。
恐竜が2匹向かい合ってるような形、とニュースでいってたけど、
あまり恐竜には見えないです。

ところで、水爆実験で被爆した漁船がなぜ夢の島に展示されてるのだろう、
という素朴な疑問を感じたので、今、調べてみた。

1954年に水爆実験を行ったアメリカ側は、
被爆した船を沈めて廃棄するように求めたが(闇に葬って忘れてほしいよね)、
日本は資料としての保存を決めて文部省が船体を買い上げて(当然の選択ですね)、
2年間の残留放射能検査が行われて(船一隻でも2年間もねえ……)、
その後は船内がかなり改造されて(え? なんで? そのまま残すべきでは?)、
東京水産大学の練習船として10年間活躍(いや、なんでそんなことした?)、
1967年に廃船となってスクラップ業者を転々とし(いやいや、なんでそうなる?)、
夢の島に捨てられた(いやいやいやいやいや、おかしいでしょ絶対)。

結局、捨てられていた船は江東区民の有志によって30万円で買い取られ、
保存活動が始まってあれやこれやあって東京都に寄贈されて、
1976年に夢の島での保存が始まったそうです。

当時まだバリバリ冷戦時代ですよ、核の脅威がまだまだ身近だった時代、
昨日、オールビーの『動物園物語』(これ最高っすね!)と
『ヴァージニアウルフなんか怖くない』を読んでたら
これらの作品の時代背景としてキューバ危機のことが書かれていたのですが、
キューバ危機は1962年。核兵器の存在感バリバリの時代。

黒澤明は『生きものの記録』という映画で、
ビキニの水爆実験をきっかけにして日本を脱出しようとする老人を描いたが、
これは1955年の作品。水爆実験の翌年。

そういえば、この映画の中でも、
三船敏郎演じる老人が核の恐怖を熱心に語っているのを、
まわりの家族たちは冷笑して聞いていましたな。

もしかしたら当時の世間一般というのは、
この、冷笑していた家族たちのほうに近い感覚だったのでしょうかね。

世界唯一の被爆国で、放射能を浴びた船がこんな扱いを受けていたとは、
なんとも不思議な話です。

第五福竜丸そのものも重要な歴史的遺産ですが、
「それが今、よりによって夢の島にある」ということ自体も、
人間の不思議というか、日本人の不思議というか、
ともかく忘れてはならないことなのかもしれません。

今、形を変えて放射能というものと向き合って大騒ぎしている日本人を、
一隻の朽ち果てた船は、夢の島の片隅で、
どんな思いで見ているのだろう。

なんてことを、海からの冷たい風に吹かれながら考えます。







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Author:TheaterNautilus
シアターノーチラス代表・今村幸市によるブログです。
年に2~3回、オリジナルの脚本による芝居を上演しています。
次回公演は2018年10月です。
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