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2019-02

小鳥たちは美しい皮肉をさえずり続ける

電車で外出するときは、電車の中で読む文庫本を1冊、
適当に選んでバッグの中に入れるのですが、
それが今日はたまたまアナイス・ニンの『小鳥たち』。

電車の中で女流作家による官能小説を読むのは、
手の中に小さな秘密を隠しているような気分です。

とはいえ、アナイス・ニンのことはよく知りません。
ヘンリー・ミラーの愛人だったってことくらい。

むかーしむかしに付き合っていた女性が、
『アナイス・ニンの日記』(これは官能小説ではなく本当に日記)
が大好きで愛読していたので、いつも身近にあったのだが、
結局ぼくは読まなかった。

自分が好きな異性が溺愛し、愛読している本を自分で読んでみるのは、
ちょっと勇気がいる行為だと思う。
その人の本心を覗きこむのと同じような行為ではないか?
あるいは、今まで知らなかった一面を発見するかもしれない不安。

ま、いいんだ、そんなことは。
『小鳥たち』、つい夢中になって読んだ。

これ、アナイス・ニンが、あるひとりの大富豪の老人の依頼を受け、
その老人だけのために書いた官能小説だという。

「ひとりの人間のために書く」というのが、ちょっといいね。
書くほうも、書いてもらうほうも、それはすごい贅沢。

そして、この場合、相手はかなりの高齢者。
おそらく彼の男性機能は、性的にはもはや「役立たず」。
そんな老人のために、ポルノグラフィを書く。

しかも、この老いた依頼主はアナイス・ニンに、こう注文した。
「詩は切り落とせ」、つまり、一切の詩情は不要。

そんな注文、というか命令を受けた美貌の作家(アナイスは美人です)は、
果たしてどんな気持ちでこれを書いたのだろう。
その心情を想像することも、もうひとつのサイドストーリー。
もうひとつのポルノグラフィ。

たとえば、「立たせてやろう」と思ったのか。思わなかったのか。
そこはけっこう重要じゃないか?

そうやって書かれた文章を、
今こうやってふつうの人たちが(しかも日本人でさえも)、
自由に読んでいるというのは、ちょっとした「のぞき見」だよな。

ちなみに、翻訳者は矢川澄子さんです。
素朴だけど格調高いです。

アナイスは「詩は切り落とせ」と命じられたが、
ここには、矢川澄子による詩情が漂っています。

美しい皮肉。







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TheaterNautilus

Author:TheaterNautilus
シアターノーチラス代表・今村幸市によるブログです。
年に2~3回、オリジナルの脚本による芝居を上演しています。
次回公演は2018年10月です。
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