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2019-02

あらかじめ書かれたラストシーンなんて

今度は純然たるミステリー芝居を書いてみたいなどと思い、
久しぶりにクリスティの『ねずみとり』を読んでいます。

正統派のフーダニットなストーリー。
閉じられた空間、逃げ場のない登場人物たち。
意表をついた犯罪、もちろん犯人はわからない。
すべての手がかりが与えられて、探偵役による謎解きが進む。
観客に「犯人は誰か?」を楽しんでもらうストレートなミステリー。

稽古開始の日、役者たちに脚本を配布する。配役も発表。

さあ、稽古の始まり!

しかし、役者たちが渡された脚本は、最後の5ページが欠けている。
つまり、謎解き場面が無いのだ。当然、犯人もわからない。

「真相がわからないと、役作りしにくいです」
「犯人が誰なのかが気になって、稽古に打ち込めません」
「自分が犯人だったらどうしようって、脚本に集中できないですよ」

役者たちが不満を口にする。

しかし僕は絶対に最後の5ページを渡すことはなく、
そのまま稽古を進めていく。

芝居ができてきて、登場人物たちに感情移入してくる役者たち。
しかし、相変わらず犯人はわからない。

「きみじゃないか?」
「いや、あいつもあやしい」
「おれという可能性もあるよ」

役者たちが、お互いを疑い始める。
稽古しながら、他の役者を見る目に疑惑と不信、不安と苛立ちが混じる。
休み時間も飲みに行っても、まわりを疑う目、目、目。
いつの間にか、役者たちは完全な疑心暗鬼のるつぼ。

これほどリアルな事件現場の再現はない。
犯人がわからないのは観客だけじゃない、役者たちもわからないのだ。

「ふふふ、これぞまさに、この脚本で実現したかった世界だ!」
……と、僕はひとりで、こっそり、ほくそ笑む。

「これからが、本当の稽古の始まりさ」

そうして役者たちは、最後の謎解きが書かれた5ページを読むことなく、
思い思いに犯人を仕立て上げていき……

事件は、さらに混迷を深め、カオスな世界へ堕ちていく。

まさに「メタ・ミステリー芝居」。

最初からすべて計算済み?
どこからどこまでが計算済み?
うーん、スパイラル♪

着々と進む『栢子の結婚』の稽古場の片隅で、
ひそかに抱く妄想の次回作。

あらかじめ書かれていた最後の5ページよりも、
もっと奇抜で、もっと人間臭くて、もしかしたらもっと恐ろしくて残酷な、
驚異のラストシーンが生まれるかも。

そしたら僕は、最初に書いてあった5ページを
自分の手で破り捨てるのだよ。













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TheaterNautilus

Author:TheaterNautilus
シアターノーチラス代表・今村幸市によるブログです。
年に2~3回、オリジナルの脚本による芝居を上演しています。
次回公演は2018年10月です。
http://theaternautilus.
web.fc2.com/index.html

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