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2019-02

再会

炎天下で自転車を漕いでると、
途中で心臓がバクバクと音をたて始める。
生きてる証拠だ、そう思い込む。

自転車が進む先には何があるのだろう、なんて考えない。
ひたすら漕ぐ、漕ぐ、漕ぐ。
自分の心臓の音を聞きながら。

数日前に、以前在籍していた編集プロダクションの社長に会う。
中目黒の、いつも稽古してるあたりの店で昼食、
とりとめもなくあれこれ話しながら、
僕が出版業界に就職した頃のことを思い出していた。

あの頃は、ビジネスとしての出版、ではなく、
文化事業としての出版という世界に夢があった。
「夢があった」なんて、ほんと安っぽい言い方だ。
でも、そんな言い方こそがふさわしかった。

1冊の本、ひとつの雑誌が、世の中に一石を投じ、
世の中の流れを変えることもある、
そういうことがリアルに起こる時代だった。
そんな時代の、最後のシッポのあたりで僕はこの業界に入り、
そしてずっと夢を見続けていた。

……で、覚めた。

いや、覚めてはいない、夢の続きを見たくて、
もう1度、目を閉じている?

寝たフリをしている?

何だろうな。

僕が在籍していた頃は編集長、
今は社長になったその人は、
あの頃のまっすぐに純粋な目ではなく、
どこか諦めとクールさを漂わせる目線で今の出版業界を嘆く。

嘆きながらも、やはり夢の続きを見たいと思っている。
どこかに、シッポの先っぽを探している。

あ、同じだ、僕と。

きっと僕も、同じ目をしている、そう思いたい。

いや、あの頃に出版業界に入った人たち、
その前の時代の出版業界を知っている人たちは、
きっと今も、同じ目をしているはずだ。
そう思う。

あの時、ドキドキしながら思い描いていた。

小さな波紋。

小さな波風。

何かを変えられる、と信じてた。
何を?

さあ。

忘れた。

いや、忘れてない。忘れたフリなんか、よせ。

だから僕は、今、芝居してるんじゃないか。

小さな波紋。

小さな波風。

人間を揺らすために、
時間を揺らすために、
日常を揺らすために。
ほんのわずかでいいから。

そのために芝居している。
芝居を作り続けてやろうと思っている。
つまづいても、
転んでも、
恥かいても、
絶望しても、
やめない、漕ぎ続ける。
心臓の音を聞きながら。

あれは夢だった、なんて絶対に思いたくない、
思わんぞ、くそったれ。








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プロフィール

TheaterNautilus

Author:TheaterNautilus
シアターノーチラス代表・今村幸市によるブログです。
年に2~3回、オリジナルの脚本による芝居を上演しています。
次回公演は2018年10月です。
http://theaternautilus.
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