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2019-02

ルート16

高村薫の『冷血』を読んでると、
しょっちゅう黒澤明の映画『天国と地獄』を思い出します。

社会の底辺で生きる人間が、
コンプレックスや卑屈さを持て余しながら
上流階級で生きている歯科医の家庭を見上げ、
羨望したり憎んだりしながら、
それがやがて恐ろしい犯罪へと展開する。

その「見上げる」という感覚が、
『天国と地獄』の犯罪者の感覚と重なる。

『天国と地獄』の下敷きとなった
エド・マクベインの小説『キングの身代金』には
そういう視点はほとんど無いから、
『天国と地獄』の底部を流れてる貧者の思想は、
黒澤明のオリジナルなのだろう。
というか、「時代背景」もあるのだろうけど。

『天国と地獄』では、丘の上に建つ豪邸を
丘の下のゴミゴミした町から見上げるという、
地理的な高低差をわざわざ設定してるのが面白い。

じつは『冷血』にも地理的な要素が出てくる。
それは、国道16号線。

犯人たちがよく利用する国道16号線は、
東京の都市部の、ちょうど外側にあたる部分を、
まるで都心を遠巻きにして眺めるように走ってる。

前に千葉県の流山市に住んでたとき、
よく国道16号線を走った。
その国道が埼玉を経て神奈川まで通じてると知った時は
なんだか不思議な気分だった。

東京という都会を遠巻きにしている道。

国道16号線には、そんなイメージがある。
そして、その国道を利用する犯人たち。

『天国と地獄』のあの結末を思い出しながら、
『冷血』を読んでます。

高村薫はドストエフスキーだというのを
何かで読んだことあるけど、
それは言い過ぎだよね。

でも、黒澤明を連想する図太さ。似てるかも。
あ、そう言えば、
黒澤明はドストエフスキーが大好きだったのだ。
(でも、黒澤の『白痴』は面白くなかったけど)
てことは、やっぱりどこかで通じてるのかな。

何にしても、『冷血』は、
国道16号線が脚光を浴びているということを、
書いておきたかったのです。

ちなみに、松任谷由実の曲に
『ルート16』というのがあります。
もちろん国道16号線のことを歌ってます。

歌詞の内容はどうでもいい恋愛話、
でも国道16号線だと思うと、
ひどく切ないのだよ。









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毎日通ってる、基本渋滞のR16だけど、映画や小説や歌になると、イライラするだけの道じゃなくなるのです


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TheaterNautilus

Author:TheaterNautilus
シアターノーチラス代表・今村幸市によるブログです。
年に2~3回、オリジナルの脚本による芝居を上演しています。
次回公演は2018年10月です。
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