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2019-02

ヒトリヒトヤク

仕事で戸川昌子の『大いなる幻影』という古いミステリーを読んでたら、
解説に戸川昌子はウールリッチが好きだったと書かれてる。
それで、久しぶりに図書館からウールリッチの短編集を借りてきた。

この人は、本当にストーリテラー。
長編ももちろん面白いけど、短編だと、そのストーリーテラーっぷりがよくわかる。
『睡眠口座』とか『マネキンさん今晩は』とか、ぞくぞくします。

ところで、この人のミステリー、「すり変わりモノ」「なりすましモノ」が多い。
誰かにすり変わって犯罪を犯したり、他人になりすましたことから事件が起こったり。
現実生活の中では、「別人になったフリをする」なんて思い切った行動はなかなか難しいけど、
その難しそうなことを、うまく「ありそうに」描くのが、ウールリッチのスゴイとこ。

ところで、読みながら、ふと考えた。
すごく面白いけど、ウールリッチの「すり変わりモノ」「なりすましもの」は、
舞台にしようと思ったら、なかなか困難ですな。

すり変わる前とすり変わった後とは、当然同じ役者が演じることになるだろうけど、
観客からは同じ役者だとわかっても、他の登場人物はうまく騙されなければならない。
そこをうまく表現しないと、物語の面白さは半減するだろう。
だいいち「別人になりきってる」ということを、どうやって表現するのか?
メイク? 衣装? でも、どうやったって観客には同じ役者だということはわかるだろう。
明らかにわかってるのに、他の登場人物たちは、わからないものとして演じる。
そこに生まれる違和感を、どうすればいいのか?

活字ではうまくごまかせることでも、生身の役者がふたりの人間を演じるというのは、
果たしてどこまで通用するのか。観客をどこまで納得させられるのか?

アガサ・クリスティはミステリーの戯曲をたくさん残してますが、
ある有名な作品(ネタバレになるから作品名は書きません)には、
戯曲の冒頭に、実際に舞台で演じられる場合には役者をどうすればいいか、
クリスティなりの注釈が細かくつけられている。
じつはその戯曲にも、「すり変わり」「なりすまし」が関わっているのだ。
クリスティも、その戯曲が現実に舞台になったときに一人二役をどう表現すればいいのかが、
けっこう深刻な問題だということに気づいたのでしょうね。

でも、この点をうまく解決できれば、
ミステリーものの舞台はもっといろいろ広がるのでしょう。
とはいえ、やはり難しそうな課題。

「すり変わり」「なりすまし」というのは、
やはり、文字だけに許されるトリックなのか?

さて、5月公演の短編集も、
ちょっとミステリアスな味付けです、
……と宣伝も手抜かりなくやります。





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TheaterNautilus

Author:TheaterNautilus
シアターノーチラス代表・今村幸市によるブログです。
年に2~3回、オリジナルの脚本による芝居を上演しています。
次回公演は2018年10月です。
http://theaternautilus.
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